ニューヨーク、グラウンド・ゼロで感じたデザインの可能性。

「9.11 同時多発テロ事件」の跡地、グラウンド・ゼロ(9/11メモリアルパーク)を見学したので記録として残しておきます。デザインに携わってた私の個人的な感想も少し。

グラウンド・ゼロとは?

知らない人は少ないでしょうが、簡単に説明します。

アメリカ同時多発テロ事件(September 11 attacks)は、2001年9月11日にアメリカ合衆国で同時多発的に実行された、イスラム過激派テロ組織アルカイダによる4つのテロ攻撃の総称。一連のテロ攻撃による死者は2996人、負傷者は6000人以上であり、インフラ等への物理的損害による被害額は最低でも100億ドルとされている。この事件を契機として、国際テロ組織の脅威が世界的に認識されるようになり、アメリカはテロとのグローバル戦争の標語を掲げ始め、アメリカ合衆国と有志連合はアルカイダやアルカイダに支援を行った国への報復としてアフガニスタン紛争、イラク戦争を行った。さらには、その後に続くISIL等のイスラム過激派を相手取った対テロ戦争の本格的な起点にもなった。
引用:wiki

同時多発テロの起こった旧ワールドトレードセンタービルの跡地が、9.11メモリアルパークとして整備され、その跡地のことを通称で”グラウンド・ゼロ“といいます。

正確な真相は未だ解明されていませんが、一般的な認識は上記の通り。

グラウンド・ゼロの場所は?

ニューヨークはマンハッタン島の南部のロウアー・マンハッタンに位置し、ウォール街にほど近い場所にあります。”世界貿易センタービル”と日本では呼ばれていた、2つの巨大なビルの跡地が通称で”グラウンド・ゼロ“と呼ばれています。

ワールドトレードセンター

9.11同時多発テロの映像

1機目のアメリカン航空11便がワールドトレードセンター北棟に突っ込んだのは映像として残っているものは少ないですが、2機目のユナイテッド航空175便が南棟に衝突する様子は一般人が撮影したものも含め、比較的映像が残っています。

ユナイテッド航空175便が南棟に衝突する映像まとめ

今見ても身の毛がよだつ映像です。当時は小学生で、夜遅くに親とテレビでこの映像を見ていたのを覚えています。事故発生時はニューヨークは朝だったのですね。この事件は国際情勢で見ても転機のひとつであり、「9.11を境に〜」という表現は今でも目にします。

これの他に、 アメリカ国防総省の本庁舎(通称:ペンタゴン)に衝突したアメリカン航空77便と、国会議事堂かホワイトハウスが標的であっただろうユナイテッド航空93便がピッツバーグ郊外で墜落した計4機の飛行機がハイジャックされた事件を”9.11 同時多発テロ”と言います。

グラウンド・ゼロは誰の設計?

この跡地の全体の設計はポーランド系アメリカ人の建築家・ダニエル・リベスキンド氏がコンペを勝ち取り設計したもので、土地所有者のニューヨーク・ニュージャージー港湾局や、旧ビル保有者である不動産開発業者などの思惑が絡み、当初の設計案に大幅な変更が加えられたようです。

アメリカ同時多発テロ事件後の世界貿易センター跡地再建コンペに当選し、業務・商業用ビルも手がけることとなった。これは1776フィート(約541メートル)の高さの「フリーダムタワー(自由の塔)」と、数本の高層ビルとツインタワー跡地の慰霊スペースからなり、2010年に完成したが、 現在の計画案ではリベスキンドのマスタープランを活かしつつも、個別の建物の設計はSOMや槇文彦、ノーマン・フォスターらが手がけている。
引用:ダニエル・リベスキンド氏wiki

グラウンド・ゼロフォトギャラリー

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グラウンド・ゼロの敷地内に入った瞬間から、ピンと張り詰めた冷たさを感じました。

大都会のど真ん中なので雑音は多いけど、何か緊張感がある空間。水が落ちる音が聞こえてきました。

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こちらがグラウンド・ゼロの空間。大理石で囲まれた巨大な幾何学的な空間に、滝が流れ落ちます。人生で初めて見る空間です。

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こちらは1300人以上が亡くなられた北棟の空間。

滝?噴水?モニュメント?跡地?建物とも言えない、巨大な空間が2つ、そこにはあります。

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平面的で撮るのが非常に難しい空間でした。

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人が触れる位置にある大理石には、亡くなられた方達の名前が刻まれています。これはアルファベット順ではなく、発見された場所ごとに刻まれているのだとか。

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大理石の先から水が張られ、中心に向かって絶え間なく流れています。

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遺族や人々の哀しみの涙のようにも、哀しみを癒すようにも見える滝。

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水面からは再建したワールドトレードセンターが。

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老若男女、人種関係なく多くの方が訪れ、巨大な空間にカメラを向けていました。

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星条旗が随所に立てられているところに、日本とは異なる愛国心を感じます。

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対岸にも絶え間なく人が。

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幾何学的で巨大な空間。

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星条旗が立てられてる名前もあれば、花が添えられている名前もありました。

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この女性はグラウンド・ゼロを見て何を感じているのでしょうか。

グラウンド・ゼロで感じたデザインの可能性

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私が感じたのは空間の荘厳さもそうですが、亡くなった方がTrajan(トレイジャン)という歴史あるセリフ体のフォントで刻まれていたのがとても印象に残りました。ローマにあるトラヤヌスの記念柱の碑文の字体をもとにデザイナーのキャロル・トンブリー氏が1989年に再現した、非常に歴史を感じさせるフォント。2000年以上前から存在するこのフォントは壮大・荘厳・優雅な印象。紀元前はアルファベットは小文字がないので、Trajanは”スモールキャピタル”と呼ばれて小文字は存在しません。イニシャル以降の少し背が低い大文字がスモールキャピタルです。

これほどに歴史の長いフォントで大理石に刻まれているので、月日を重ねるごとに趣を感じさせる味わいが出てくるのではないでしょうか。時が経っても、色褪せることのない表現で名前が刻まれ続ける。Trajanを採用したのは素晴らしいですね。

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この男性のように、亡くなられた方の名前を触って肌で感じることもできます。

“石に刻む”という表現は亡くなった方に対しての敬意と尊重を感じ、また人の手の置ける位置に配置されているところは遺族の方達への配慮が感じました。

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こちらのサインは9/11メモリアルパークのもの。9.11の”11″が鮮やかな水色で2棟のワールドトレードセンターを連想させます。

9/11メモリアルパークはWTCのなかでも少しデザインのテイストが違います。

フォントは”Gotham(ゴッサム)“ですね。オバマ大統領の大統領戦で使われたことが有名な、近代的なゴシック体のフォントの代表格です。今となってはニュートラルなイメージかもしれません。

今風ではありますが、時が経てば「あの時代はGothamのような秩序的なゴシック体が流行った」となるのでしょうか。

時を止めるデザインにするのか、色褪せないデザインにするのか。

単発的ではない、日常のデザインの範疇を超えた時系列の配慮。馴染みのあるフォントであってもデザインする対象によって深さは異なりますね。

表現の幅で生かすも殺すもできる、デザインの可能性を感じました。

Gotham(ゴッサム)を採用したのは時間を意図的に止めているのかな、と私は感じました。(あくまで個人の感想です)

グラウンド・ゼロ周辺の様子

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周辺は緑が整備され、憩いの場としても。

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私が訪れたのは10月の水曜日でしたが、平日にも関わらず訪れる人は多い印象でした。

ですがそれだけ多くの方達の記憶に残っている出来事だと考えさせられます。

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メモリアルミュージアムの入場料は24ドル。混んでいたので中には入りませんでしたが、中も見ればよかったなと。
次ニューヨークに訪れた際に行こうと思います。

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ワールドトレードセンター(WTC)は7つの建築物で構成されています。こちらはフォントが違うので、9/11メモリアルパークとWTCはまた違うのでしょう。

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今は1 ワールドトレードセンターという、新たなランドマークがグラウンド・ゼロの真横にそびえ立っています。設計当初は「フリーダム・タワー(自由の塔)」という名称でしたが、”ワールドトレードセンター(WTC)”の名称を忘れないように、と倒壊した北棟と同じ名称が与えられています。高さは541m、104階建て。世界で6番目に高い建物で、ニューヨークで一番、西半球でも最も高い建物となっています。(参考:wiki)

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ワールドトレードセンター駅はクジラの骨のような有機的な建築物で、非常にダイナミック。

グラウンド・ゼロの光の柱

グラウンド・ゼロの2つの空間は、夜になるとライトアップされて光のビルが2つ現れます。
私は夜に訪れることができなかったため、実際に見ることはできませんでしたが、以下のようにライトアップされるそうです。

グラウンド・ゼロのライトアップの様子

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By Derek Jensen – Tysto, パブリック・ドメイン, Link

グラウンド・ゼロ感想

他の歴史的建造物も適切な表現、デザインで設計されているとは思いますが、自分が認識している最近の出来事の跡地が、このようにリファインされていて、改めて事件を肌で感じられました。グラウンド・ゼロを訪れたことで”9.11″の事件を肌で感じたと同時に、デザイナーとしてできること、少し学べた気がします。

あと気になったのは犠牲になった方達が3千人近くいるような場所で、セルフィーを撮ったり楽しそうに撮っている人たち。顰蹙を買うような行為な気で心地よいものではありませんでした。綺麗に整備されているとは言え、事故現場で自撮りするようなものですからね。”9.11″を知らない若い世代では、観光地感覚で「いえーい!」となるのもわからなくもないですが、事件を認識している人たちは自重すべきでしょうね。暮石とはまた異なる、記念碑でもあるこの空間。星条旗や花がいつまでも添えられ、訪れる人の絶えない空間であって欲しいと感じました。

おしまい。